「駅の場所を教えてくれないか。」
すごく威圧的な声。
透き通った青い目も、すごく冷たい印象。
「え、えっと、あっちです。」
歩いてきた方向を指差したけど、この人、そっちの方向を見ることもしないで私を見ている。
・・・なんか、怖い。
私が一歩後ろに引くと、その人はふっと自嘲的に微笑んで言った。
「ありがとう。君の名は?」
笑うとますますキレイ・・・悪い人ではないのかも。
でも、苗字は言わない方がいいかな?
「花梨、です。」
とたんに、その人は目を見開いた。
「そうか、君が・・・」
「え?」
「いや、今は言わないでおこう。」
そう言って、私の手を取ると手の甲に軽くキスをした。
「あ・・・」
驚いて固まる私を置いて、その人は駅に向かって背を向ける。
「また近いうちに会える。」
そう言い残して、去って行った。