頼忠さんのような気もするけど、人違いかもしれないし、声をかけるのはやめよう。
それよりシューズを探さなくちゃ。
テニスラケットと野球用品の間を抜けて、靴の陳列棚へ歩いて行く。
なんかいっぱいあって迷っちゃうな。
ピンクのラインが入った白いシューズを手にとって見る。
可愛いけど、とっても高価。
「なんだ?花梨じゃないか。」
振り向くと、いくつか箱を抱えた勝真さんが後ろで目を丸くしていた。
「勝真さん、どうしてここに?」
「俺、ここでバイトしてるんだよ。」
「そうなんですか!」
「お前は?」
「あ、ランニングシューズを探してるんです。」
「へえ。ランニング始めるのか?」
「はい。肺活量には有酸素運動が良いって聞いたので。」
「そっか。じゃあ見てやるよ。」
「ありがとうございます!」
勝真さんは持っていた箱を手際よく棚に仕分けてから、パイプ椅子を持ってきた。
「足のサイズは?」
「23センチです。」
「値段は安い方がいいだろ?」
「はい。」
「じゃあ、コレか、コレだな。そこに座れ。」
棚から箱を2つ出して、1つを脇に挟むともう片方を開けながら勝真さんがアゴでパイプ椅子を示す。
私が座ると、跪いて靴を脱がせてくれた。
シンデレラみたいな気分。
新しい靴を出して履かせてくれる。
なんか、ここまでされると申し訳なくなってきちゃう。
「こんな事させてすみません・・・」
勝真さんがキョトンとした顔を上げた。
「ん?ああ、いつもの事だよ。仕事、仕事。」
そう言うと、視線を靴に戻す。
私の足の形に合わせて靴の紐を丁寧に引っ張りながらボソリと呟いた。
「ピンクの花柄。」
何?
・・・もしかして、私のパンティーの柄?!
「勝真さんのエッチ!」
「いいじゃねえか、減るもんじゃないし。」
そう言って勝真さんはニヤニヤと私を見上げる。
「最低!」
私は恥ずかしくって、目の前にある勝真さんの頭をポカポカ叩くしかなかった。