泰継さんが真剣に本を選んでるのを見てたら、雑誌の立ち読みなんて考えてた自分が恥ずかしくなっちゃった。
そうだ、こっちのCD屋さんで、少しジャズのCDでも見ようかな。
ジャズ、ジャズ・・・あれ、意外に少ないんだ。
あ、こっちはオーケストラ。
そういえば、今度の文化祭でやるメインの曲って、もとはオーケストラなんだよね。
あった。
ん?
このジャケットで指揮してる人、どっかで見たような・・・
「花梨さん、こんにちは。」
「ひゃっ!」
「あ・・・申し訳ありません。驚かせてしまいましたね。」
泉水さんが体中で申し訳なさを表して後ろに立っていた。
「いいえ、大丈夫です。」
泉水さんが安心したように微笑んで私が持ってるCDを覗き込む。
「何を真剣に見ていらしたのですか?」
そこで私は初めて気がついた。
CDジャケットの人物と泉水さんを見比べる。
「泉水さんに似てるんだ!」
泉水さんが目を丸くした。
「私と?」
そして、CDを見て、少し辛そうな顔をした。
「あ・・・」
「もしかして、この人、泉水さんのお父さんとか?」
「はい。その通りです。」
「指揮者のお父さんなんてすごいですね!どんな人なんですか?」
「実は、4年前に他界しました。公演で長期間家を空ける事が多かったので、私もあまりよく知らないまま逝ってしまって・・・」
泉水さんが寂しそうに目を伏せる。
悪いことを聞いちゃったみたい。
「そうだったんですか・・・」
「でも、父の指揮した演奏は、こうしていつまでも残ります。父が指揮者という仕事をしていたことは、私の誇りです。」
泉水さんはそう言うと、柔らかく微笑んだ。
泉水さんの音楽に対する考え方って、私、大好きだな。




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