「泰継さん、こんにちは。」
声をかけると、泰継さんは目を丸くしてこちらを見た。
「なぜお前がここに居る?」
「ちょっと、雑誌を立ち読・・・じゃなくて、ほ、本を買いに来たんです。」
「そうか。」
「泰継さんは、何してるんですか?」
「うむ。音楽療法の本を探していた。」
「音楽療法?」
よく分からないけど、すごく興味深い言葉。
「花梨、お前の歌に心を癒す力があるというのは、先日言ったな。」
「・・・はい。」
泰継さんは私の事を買い被りすぎだと思う。
でも、そう言うと泰継さんは照れるような事をいっぱい言い出すので、今日は言わない。
「私はその力をどうにか医療に取り入れられないか調べてみたのだ。」
「なるほど・・・」
「他にもそのような考えをもつ医師は多く、すでに音楽療法として確立されているらしい。」
そう言って本棚を見上げた泰継さんの横顔はとってもキレイ。
思わず見とれちゃう。
「私がいつか、鍼灸院を開業した時には、それを取り入れてみたいと思う。」
「わぁ、いい考えですね。」
泰継さんのピアノで音楽療法かあ。
何でも治っちゃいそうな感じ。
「花梨、お前の力も必要だ。」
「へ?」
「お前の歌で私の許に来る患者を癒して欲しい。」
「ええっ?それって、泰継さんの鍼灸院で働けってことですか?」
「いや、その必要はない。」
あ、時々遊びに行くぐらいでいいのかな?
「爺の言うように嫁に来れば良い。」
や、泰継さん、この前のお爺さんの話、真に受けすぎ!
私は顔が熱くなるのが自分でも分かってしまったので、逃げ出すことにした。
「あはは・・・とってもいいお話ですけど・・・ちょっと考えさせてください・・・じゃ、また〜。」




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