倒れた彰紋君に駆け寄ると、彰紋君は顔を顰めながら座り込み、足の裏を覗き込んだ。
ひゃっ、血が出てる!
「何か尖ったものを踏んでしまったみたいです・・・」
大変!
すぐに手当てしないと!
肩を貸してもらうためイサト君を呼ぼうとしたら、イサト君は泣かせてしまった男の子をなぐさめるのに必死だった。
代わりに私が彰紋君に肩を貸して救護室へ向かう。
「・・・すみません・・・僕の不注意で楽しい時間を台無しにしてしまって・・・」
彰紋君、こんな怪我をしてる時に自分を責めるなんて・・・
「そんなことないよ。私は彰紋君と一緒に居られればいいの。」
怪我は心配だけど、それ以前に、どんな彰紋君でもそばに居たいよ。
彰紋君が真顔で何か言おうとした時、救護室の人が中から扉を開けて出てきてくれた。
すぐにテキパキと手当てが始まる。
あっと言う間に包帯を巻かれた彰紋君は、砂の上に足を付けないように歩かなきゃいけない。
松葉杖を貸してくれようとした救護室の人に、彰紋君は丁寧なお礼を言いながらそれを断った。
私の肩につかまって、片足で跳ねながら、救護室を出る。
「松葉杖、いらないの?」
そう言った私に、彰紋君はまた申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんなさい、花梨さん・・・僕のわがままを聞いてくれませんか。」
えっ?!
「今日一日、松葉杖の代わりに、僕を支えて欲しいんです。」
「なーんだ、そんな事?」
私が笑いながら言うと、彰紋君はどこか悲痛とも言える顔で続ける。
「だって、そうでもしないと、今日の花梨さんを独り占めできないでしょう?」
えっ!
私はびっくりして固まってしまった。
彰紋君、ひ、独り占めとか考えてたの?
頬が火照っていく感覚と同時に、彰紋君の素肌の感触が鮮明になる。
えっと、今日一日、彰紋君を支えるってことは、今日一日、こんな密着状態で過ごすってことで・・・
「ね、花梨さん、お願いです。」
言いながら、彰紋君は私の肩を抱くようにして、ますます密着してくる。
「ビーチバレーをしているあなたを見ていたら、僕、あなたに触れたくて耐えられなくなってしまったんです。」
「そ、そうなの?」
「はい。だから・・・いいですか?」
「う、う、うん。」
私は恥ずかしくて、こくこくと頷くしかできない。
彰紋君はそんな私に抱き付くようにして、よかった、とホッとしたように言った。