お城の周りに海草を飾り付けるなんて、泉水さんらしい素敵な発想!
「海草、いいですね!一緒に探しに行きましょう!」
「では、私はここで水を用意していよう。」
「お手伝いできず申し訳ありませんが宜しくお願いいたします、泰継さん。」
波打ち際に海草は落ちていないようなので、私と泉水さんはビーチサンダルを履いて岩場に向かった。
岩場は危ないから、よほど自信がある人じゃなきゃこの辺では泳がない。
そのせいか、ほとんど人は居なかった。
「この辺りの岩は滑りやすいようです。花梨さん、どうぞお手を。」
隣を歩いていた泉水さんが先に立って手を差し出してくれる。
「はい。」
私がその手を取ると、泉水さんはにっこりと微笑んでから、急にはっと息を飲んだ。
「どうかしたんですか?」
「いえ・・・申し訳ありません・・・」
泉水さんは目を伏せて、許しを請うように続ける。
「やっとあなたと二人きりになれた・・・などと、良からぬことを考えてしまいました。」
ドキ、と心臓が跳ねる。
泉水さんの言葉、とても嬉しいのに。
それって良くないことかなあ?
「私も同じことを思ってました。」
そう言って舌を出すと、泉水さんが目を丸くする。
「花梨さんも・・・ですか?」
「はい。少しだけなら、そんな風に思っても良いんじゃないかと思います。」
すると、泉水さんは胸のつかえが取れたようにほっと息を吐いた。
「そうですね・・・少しだけなら・・・ありがとうございます、花梨さん。」
丁寧に頭を下げて、泉水さんは私の手をしっかり握ると岩場を歩き出す。
手を引いてもらいながら、斜め後ろで見る泉水さんの背姿は、とても頼もしい。
別に、その・・・初めて見るわけじゃないんだけどね。
いつも優しい物腰だから、こうして男らしい肩や背中が露わになると、急にドキドキしちゃうんだ。
波が寄せる場所までたどり着くと、泉水さんが下を覗き込んで嬉しそうに振り向いた。
私も慌てて覗き込む。
「あった!」
岩にたくさん生えてるよ!
庭木みたいに見えそうな形のもあって、いい感じ。
私は夢中でそこにしゃがみ込んで、海草へ手を伸ばした。
隣に泉水さんも膝を付いて、手を伸ばす。
あっという間に、二人の手には海草が花束みたいになった。
ちょっと不格好な花束を見せ合って、微笑み合う。
うん、泉水さんには、海草の花束だってとってもロマンチックに似合っちゃうんだ。
私が幸せな気分になっていると、泉水さんが頬を赤くして目を伏せた。
あ・・・泉水さんの考えてること、分かっちゃったかも・・・
だって、もうすぐ出会って一年だもの。
「少しだけなら・・・良いですよね。」
恥ずかしいのを我慢してそう言ったら、泉水さんは何だか眩しそうな顔で私を見て。
それから、軽く触れるだけのキスをくれた。