そばに池を作った方がお城も作りやすいしね。
「じゃあ、私はここで砂を掘るので、泰継さんは水を汲めるものを探して来てくれませんか?」
「分かった。」
「では、私は海草を拾いに行って参ります。」
さすがspace-time。
テキパキと手分けして動き出す感じが気持ちいい。
私がせっせと砂を掘ってお城の土台を作っていると、もう泰継さんが戻ってきた。
「花梨、これで良いか?」
手には空き缶が3つも。
「はい、十分です。」
「そうか。では洗ってくる。」
泰継さんは褒められた子供のような顔をして波打ち際へ歩いていく。
こういう時の泰継さんは、本当に可愛いんだよね。
独りでニヤニヤしながら作業を進めていると、いきなり横から海水が降ってきた。
「ひゃっ?!」
見れば泰継さんが3つの空き缶からいっぺんに、私の掘った穴へ水を注いでいる。
「あ・・・!」
私が止める間もなく、穴はドロドロの崩れ気味な状態になった。
「花梨、穴が崩れた。」
泰継さん・・・他人事みたいに言わないで・・・
「えっと、掘っている途中で水を入れると、掘りにくくなっちゃうんです・・・」
「そうなのか。」
泰継さん、今度は叱られた子供みたいになっちゃった。
「大丈夫ですよ、このままでも掘れますから。」
やってしまったことは仕方ないしね。
私がドロドロになった穴に手を入れて水を含んだ砂を掻きだし始めると、泰継さんも向かい側に座り込んで、同じように掘り始めた。
「私の手違いだ。手伝おう。」
「お願いします。」
黙々と二人で穴を掘る。
時々、砂の中で手が触れ合う。
砂の中の手って、何だか変な感触がして、もう何度も触れ合っている泰継さんの手なのに、ヘンな気分になってくる。
チラリと泰継さんを見たけど、泰継さんは黙って手もとを見つめたまま砂を掘っている。
ヘンな気分になってるのって、私だけ?
と思った途端、泰継さんの手が、砂の中でいきなり私の手をつかんだ。
「ひゃあっ?」
私は素っ頓狂な声を上げる。
見れば、泰継さんは動物になる時の瞳で私の目を見詰めながら、逃げようとする私の手をドロドロの中に沈めた。
かなり深くなった穴は、二人の肘まで飲み込んでしまう。
「花梨、おかしな気分になった。」
言いながら、泰継さんは、ドロドロの中で私の手をまさぐる。
ど、どうしよう、手なのに、ただ手に触ってるだけなのに、なんだか・・・!
「・・・ふゃ・・・?!」
私が意味の分からない声を上げると、泰継さんは、今度はすごく大人っぽい笑みで言った。
「知っているぞ。花梨のその声は、心地よい証拠だ。」