浜辺を走ってゴールの岩場に着くと、頼忠さんがすごい勢いで泳いでくるのが見えた。
あまりにも一生懸命すぎて、溺れている私を助けに来てくれるみたいな錯覚。
ただ待っているのが申し訳なくなって、私は岩場から海に入ると、頼忠さんの方へ泳ぎ出した。
でも、海流のせいで上手く進めなくて、岩場のそばでジタバタしてるうちに、頼忠さんの手が私をつかむ。
「こんな場所で泳いでは危険です。」
頼忠さんは、そう言って水の中で私を抱き締めると、息を切らせながら続けた。
「・・・私の勝ちです。」
「はい。」
言いながら、頼忠さんの後ろを見る。
勝真さんの姿は見えない。
そこまで引き離すほど頑張らなくても・・・
と思っていたら、突然、頼忠さんが私の腰の辺りを抱えて、そのまま泳ぎ出した。
「え・・・?」
水の中を、いとも簡単に運ばれてしまっている。
頼忠さんは、誰も居ない岩場の陰に私を運んで、岩に私を座らせると、言った。
「少しの間だけ、ここで・・・」
言い終わらないうちに、顔が近づいてきて、唇が重なる。
なんで?
どうしてこんな所で急に?
驚いて固まる私に構わず、頼忠さんは舌で私の唇をこじ開ける。
ええっ?
誰かに見られた恥ずかしいよ?
でも・・・
「・・・ん・・・」
深いキスが気持ちよくて、そんな事どうでも良くなってきちゃった。
岩場に小さく当たる波と、私達の唇が、同じような音を立てる。
どうしよう、エッチな気分になっちゃいそう。
このまま水の中で溶け合っちゃいたいかも・・・
や、ダメだよ!
人が来るかも知れないもの!
慌てて頼忠さんの胸を両手で押すと、唇を離した頼忠さんが申し訳なさそうな顔をした。
「・・・どうしたんれすか・・・?」
口の中が痺れたような感覚のまま、辛うじてそれだけ言う。
すると、頼忠さんはしばらく黙ってから、青ざめた顔で言った。
「申し訳ありません。あなたの水着姿が・・・その・・・あまりに可愛らしいので・・・」