私達は、蒸気船マークトゥエイン号の上からランドの夜景を見渡していた。
クリスマスデコレーションが、とってもキレイ。
豪華客船を模したこの船も、電飾がキラキラとして、すごくロマンチック。
隣に居るのが恋人だったら、もっとイチャイチャするんだろうけど・・・
そう思いながら隣を見上げると、こちらを見ていた和仁さんと目が合ってドキッとした。
和仁さんもギクッという顔をして慌てて前を向く。
・・・ま、まあ、こういう状態で来るのも、いいかもね。
この間、練習前に和仁さんと話してたら、二人でディズニーランドに行かないか、と誘われた。
私なんかでいいんですか、って尋ねたら、まだ分からんのか、って怒られた。
多分、私の自惚れでなければ、和仁さんは、私の事・・・
でも、ちゃんと告白して欲しいし、和仁さんも、このままで居るつもりはないみたい。
お前がもう少し私を知ってからにしよう、とかため息混じりに言ってたから。
今日はそのためのデートなんだって。
私も和仁さんのこともっと知りたいと思ってたから、和仁さんの考えは嬉しい。
でも・・・今日は一日中、お互いを意識しすぎてホント困った。
和仁さんって、思ったよりも照れ屋で、その上、考えてることが顔に出やすい。
ちょっと手が触れただけでも、ビミョーな空気が流れて、ドキドキしちゃう。
・・・好き・・・だと思う、多分。
横柄な口調にはもう慣れた。
最初は怖かったけど、慣れると案外、嘘がなくていいと思う。
すぐ怒るけど、理不尽な事で怒るわけじゃないし、たいてい照れ隠しだったりする。
何より、あまり幸せとは言えない境遇の中で頑張っているのに心打たれる。
家業を継ぐことを嫌がる人だってたくさん居るのに、儲かっていない楽器店を継いで、活気あるものにしようとしている。
そのためなら、お父さんにこき使われても、ひたすらそれに耐える。
人一倍、野心家で・・・努力家。
目標に向かって、がむしゃらにぶつかっていく人。
勝ちに行く人。
私の夢を叶えてたいって言ってくれていることも、決していいかげんな気持ちで言ってるんじゃないと思う。
だって、嘘をついたら顔に出ちゃう人だもん。
そう思ったところで、和仁さんがふいに口を開いた。
「花梨、いつか、お前を本物の豪華客船に乗せてやる。」
そう。
こんなことも、本気で言っちゃう人。
だから、私も本気で答えるよ。
「はい!楽しみにしてます!」