海に来るのなんて、何年ぶりかな。
子供の頃はよく、砂でお城を作ろうとしたけど、思った通りにできなかったんだよね。
そんな事を思いながら波打ち際に座っていたら、泉水さんと泰継さんが心配そうに覗き込んできた。
「そんな場所に座って何をしている。」
「ご気分がすぐれないのですか?」
私は慌てて立ち上がって首を振った。
「いえ、砂のお城のことを考えていたんです。」
「何?」
「え?」
二人とも、目を丸くしている。
「子供の頃、よく砂でお城を作ったなあって。」
「砂で、城を?」
首を傾げる泰継さんの横で、泉水さんが安心したように息を吐く。
「ああ・・・幼い頃の楽しい記憶を、思い出しておられたのですね。」
「泉水、砂で城を作るのは崩れやすいし難儀だと思うが、楽しいのか?」
泰継さんが真面目な顔で言って、私と泉水さんは吹き出してしまった。
「濡れた砂なら、そんなに大変じゃないですよ。」
そう言って、私は近くの水たまりから海水ごと砂をすくうと、砂の上に垂らした。
垂れた砂が積み上がって、塔のような形になる。
「なるほど、洋風の城なら可能だな。」
泰継さん、日本のお城を想像してたんだ?
私と泉水さんはまた吹き出してしまった。
そんな事には慣れっこの泰継さんは、私の真似をして砂をすくって垂らすと、ふいに顔を上げた。
うっ、この感じは・・・
「花梨、私も砂で城を作ってみたい。」
やっぱり。
でも、私も少しだけそう思ってたんだ。
子供の頃は上手くできなかったけど、今ならすごい大作ができるかもって。
「そうですね、作ってみましょうか?」
言うと、泉水さんまで何だかワクワクした顔をして言った。
「私にも、お手伝いさせて下さい。」
「もちろんです。じゃあ、早速作りましょう!」
よし、大作を作っちゃうぞ!
私が波に邪魔されない場所へ陣取ると、二人が口々に言った。
「水が必要だな。」
「海草で周りを飾り付けるなどはどうでしょう。」
そうだなあ、まずは・・・