やっぱり海に来たんだから、泳がなくちゃ。
波打ち際で準備体操をしていたら、勝真さんが私の顔を覗き込んできた。
「花梨、お前ちゃんと泳げるのか?」
う・・・確かに、平安市は海から遠くて、あまり海に来たことないから・・・
「えっと・・・プールではそれなりに・・・」
ぼそぼそと口の中で答えたら、勝真さんはニヤリと笑って言った。
「遠慮するな、俺が手取り足取り教えてやるよ。」
な、なんかイヤラシイ感じがするんですけど・・・
冷や汗を垂らしていると、近くで聞いていたらしい頼忠さんが助け舟を出してくれた。
「勝真、水泳を教えるなら私の方が適役だ。」
そうだよね、頼忠さんは体育の先生を目指してたんだもの。
じゃ、頼忠さんに教え・・・
「そんな事言って、花梨の身体を触るつもりなんじゃないのか?」
からかい半分だけど、勝真さんの目は笑っていない。
「何?!お前とは違う!」
よ、頼忠さんまで・・・
「どうだか。それに、俺がお前より泳ぐのが下手だっていう証拠がどこにあるんだ?」
あの・・・頼むから私を挟んで頭の上で睨み合わないで・・・
「・・・分かった。あの岩場まで競争をして、勝った方が花梨さんに水泳を教える。それで良いな?」
「上等だ。」
言うが早いか、二人は子供みたいに海へ駆け出して、波間に飛び込んで行った。
「ちょ、ちょっと待・・・」
結局、私は独り取り残されてしまった。